発表会記録⑥

『ぎゅうううう』

思い描いていた発表会にならなくて、
くやしくて、泣く。
それって、成長の証でもあります。
みんなはじめは、小さい頃は、
そんなこと何てことないこと、
だったんじゃないでしょうか?

今回はある生徒と、
くやしくて、
舞台袖で一緒に泣いて、
一度別れて、
最後の記念品渡しの時

「リベンジしてもいいよ、何回でも。」

と伝えた時、
返ってきたのは

「もうしない。次は新しい曲やるよ。」

の決意でした。

ここで止まる、
やり直す、
色々な選択肢がある中で、
他の誰でもなく自分で決めて、
進む決意ができたこと。

もう今、成長してる!

って思って、
さっきまで一緒に泣いていた生徒が
すごくキラキラして見えました。

うまくなくていい。
間違えた回数なんて数えて
大人は子供を叱る必要なんてない。
音楽って点数つけなくていいんです。
でも、
学校の音楽は点数がつく。
音大に入ったら、
毎日のように比べられて、
間違えたり弾けなかったりしたら
その分容赦なくマイナスがついたけれど、
たねまきのレッスンも発表会も、
学校や社会でいい点をとるためのものではありません。

それでも、子供は成長して、
ただ楽しいだけだったピアノをいつか

「こわい」

と思ったり

「間違えたくない」

と思ったりします。
それは誰かに迫られたからではなく、
生活の中での経験や
心と体の自然な成長で、
それは誰にでもあることです。

発表会後、
ある生徒のお母さんと電話をしていて

「練習不足だし、
本番でたくさんつっかえたりしていたけれど、
そんな事気にせずに楽しんで弾いている我が子を頼もしく、
すごいなと思いました。
いつか、自分で気づく時が来るはずだから、
今はこれでいいんだよな、と感じます。
それを、親は待っていればいいんですよね、
それが、大切なんだな、と思います。」

と、穏やかな声で伝えてくれました。
こんなあたたかい眼差しの中で
ピアノが伸び伸び弾けるっていいな、
なんか、うらやましい!
とも思いました。

そして、
電話越しにお互いの思いが重なっているのを感じ、
とても嬉しい電話の時間でした。
この電話の最中、
この日レッスンじゃない生徒が
教室のドアを開けて

「先生―!」

って元気な声で入ってきて、
何事かとびっくりしていたら、
発表会で撮った写真を渡しに、
わざわざ持ってきてくれたんです。
発表会が終わった後の余韻が
生徒の中にも親の中にも
ホカホカと残る数日間。
写真と一緒に生徒の興奮も受け取りながら、
嬉しい電話。
この時間、2重に嬉しい気持ちになってしまいました!