待つ。

『いつもの教室で発表会』の撮影も、もうすぐ終盤。先日、Nちゃんの撮影日でした。

たねまきには『宿題』という考え方がありません。次はこの曲ね、と言って、楽譜に印をつけて帰します。

あえて「宿題」と言わなくても、「次はこの曲をやるんだな」と知っていれば、「弾きたいから」「ピアノが好きだから」という自分の意志でピアノに向かえるようになっていきます。

子供の気持ちが育つまで、楽しい発見に満ちたレッスンをしていきながら、子供の育ちを、何年かかっても、じーっと待ちます。

Nちゃんは、おうちではあまり弾かない。時々弾くぐらい。レッスンはいつも楽しく通っています。毎週、私にお話したいこともたくさんある女の子。そして、この曲が弾いてみたい、こんなふうに弾きたいな、という憧れをいつも持っています。

撮影日、何回か撮ってみたけど、自分で納得できる演奏ではありませんでした。思い描いていた演奏にならなかった悔しさが滲んで、弾いている最中もそれが音にもなって、音は出ているけど、Nちゃんの音じゃないね…。

特別に、ピアノ教室がお休みの日に、私もNちゃんもゆっくりした気持ちでNちゃんの音を取り戻すために、教室に来てねと約束しました。約束の日、1時間ぐらいかけて、一緒に細かく楽譜と、ピアノと向き合いました。その間一度も気持ちを切らさずに、Nちゃんはがんばりました。

もう一度、撮影。今度は、Nちゃんの音が戻りました。ミスタッチはたくさんあります。でも、気持ちよく弾けた、できた!Nちゃんに自信がもてなかったのは、間違えることが直接の原因ではなく、今、自分が、この曲をどう弾きたいのかわからないことだったり、どう弾きたいのか、どんな憧れがあったか見失っていたことだったり、言い様のない焦りだったり。いろんなことが複雑に絡み合っていたのが音になっていたのだと感じます。

時間を気にせず、一緒に向き合う時間が、ひとつひとつ、その不安をときほぐしていけたかな。いい表情で帰っていきました。

そして後日、Nちゃんのお母さんがお礼にと、手作りのマスクをプレゼントしてくれました!

口紅つけていても、つかないですよー!と。口紅使わないけど、でも、口がつかないから息がしやすーい!心のこもった快適マスクでした!暑いので髪もまた自分で突然切ってしまい、生徒さんにも『あ!!先生また自分で切ったんでしょー!』と、セルフカットの先生として定着しております。