今年の発表会の一コマ


日野校の、4名の出演者のグループで発表会に出たMちゃん。本番、1曲目の最後の音で、なかなか右手の和音が探せません。やり方を変えて、少し前に戻ってやり直しても、やっぱりいつもと違う鍵盤に指が吸い寄せられる。何回も、何回も、何回も。

Mちゃんの背中を見守りつつ一瞬「Mちゃんのそばに行って、音を教える」という選択肢が私の頭をよぎりましたが、会場にいるお客さんと、お父さん、お母さんを見た時、そこにあったのは、開場にいるみんなが前のめりになって、「がんばれ!!」って応援する空気。『Mちゃんは今、ひとりじゃない、みんなだ!』

それに、Mちゃんの強さは、今まで一緒にレッスンで過ごしてきたなかで知っています。“私が行かなくても、Mちゃんは大丈夫”と確信して、私もみんなと一緒に「がんばれーっ!シ、レ、ソ・・・!」と心の中でMちゃんの背中に向かって叫びました。

とっても長い時間に感じたけど、ピリリと嫌な空気なんかじゃなく、みんながひとつになって応援しているあったかくて熱い空間が不思議でした。緊張の舞台で、諦めないで、最後の音と向き合って、たねまきの発表会史上最長時間、音を探そうとがんばり続けられることのすごさ!だからこそ、会場のみんなもひとつになって、あんな空気になれたんだと思うし、2曲目に入ったときには、ちゃんと集中できていたことも、かっこいい!

そんなことを、伏し目がちで肩を落とすMちゃんに発表会当日伝えたけど、それでもやっぱり落ち込んでいるような気もして、発表会が終わってMちゃんがレッスンにやってくるまでの2日間、Mちゃんは、ぐっすり眠れたかな・・ごはんおいしく食べられたかなー・・と、私はMちゃんのことが気がかりで、頭がぐるぐる(笑)

レッスンに来たMちゃんに、発表会が終わってからずっと心配していたことや、土曜日の発表会が、私にとっては100点満点だったこと、伝えたかったたくさんのこと、ほぼ一方的に思いのたけをありったけ語りました。そんな私の話をひとしきり聞いてMちゃんは「たくさん音を探して頑張ったけど、結局みつからなかったから、最後らへんはあきらめたんだよ。」とか、「2曲目の時、最初はちょっと、あーぁって思いながら弾いてた。でも、後半は大丈夫だった!」と。Mちゃんなりにいろいろ思いながら弾いてたこともわかりました。

さて、Mちゃんのレッスンの後に来る次の生徒のKちゃんは、Mちゃんのお友達で、発表会でも同じグループ。Mちゃんが帰る少し前に教室に来たので、教室には3人がそろいました。私がKちゃんに「ねえねえ、発表会の時さ、Mちゃんの最後の音の時さぁ、、」と言いかけたらKちゃんがかぶせぎみに、私とMちゃんに「そうそう!がんばれぇぇぇ~!・・・う~~ん・・がんば・・はー・・がんばれがんばれー!!って、すごいずっと思ってた!!」と身振り手振りをつけて伝えます。
私も「そうそう!さっきその話をしてたんだよちょうど!私も、うしろでずっと応援していたから、やっぱりみんな、おなじ気お持ちだったよね!なんかさ、がんばれぇーっうーんっって思いすぎて、おしりから何かでてきちゃうんじゃないかというぐらい、Mちゃんだけじゃなくて、みんなふんばってたよね!!」と言うと、MちゃんもKちゃんも大爆笑。Mちゃん、ここ1年で一番元気に「さようならー!」と言って帰っていきました。

レッスンのあとにMちゃんのお母さんと電話したら、お母さんもやっぱりあったかい気持ちでMちゃんを見ていました。いつもみたいに弾けなかったね残念だったねじゃなくて、あれだけがんばれるのはすごいね、って、お父さんもお母さんも。あと、発表会のCDにするとき、編集して音をきれいにつなげることもできるけど、そんなことはしないでそのままがいいね、と。がんばったあの瞬間に無駄はなかったし、なによりもあの時間の中にMちゃんがぎゅっと凝縮されていたんだもの。
だけどお母さんは「でも、あの瞬間にあそこにいた人には伝わるけど、CDで音だけになったらあの場にいなかった人にはどう思われるかな?」ってちょっと心配していました。確かに・・・!!あの空気感は、その場にいないとなかなか伝わらないかも。だけど・・たねまきに通っている生徒さんや、お父さんやお母さんなら、きっといろいろ想像して、あったかい気持ちで音を受け取ってくれるに違いない。

ピアノを通して、その人の内面、いいところがくっきりと見えてくる。ずっと見てくれている人、応援してくれているひとが、あそこにも、ここにもいる。それに気づける発表会。

私までなんだか心がポカポカうれしくて、電話を切った後に、夕飯のちくわの磯部揚げを作りながら、なんだか涙がぽろぽろ流れる不思議現象。息子が「ママどうしたー?」って心配してくれました。